2014年5月5日

LIFE! (The Secret Life of Walter Mitty)

ベン・スティラー監督ベン・スティラー主演の『LIFE!』(The Secret Life of Walter Mitty)を観てきました!
観る前から期待していただけあって、とても面白く、そしてすごく楽しい映画でした。
「楽しさ」を感じられる映画を観たのは結構久々な気がします。

映画館を出るときに年配のご夫婦が「きれいな映画だったね」と言っているのを小耳に挟みましたが、まさにその通りで、グリーンランドやアイスランドの街並みといった映像美だけではなく、脚本や構成、キャラクターやラストの展開など、実に収まり良く、観ていて嫌な要素や不安になる要素が一切ない、きれいな映画でした。
人によっては物足りないって言うかもしれませんが、僕は絶賛しますよ。

ベン・スティラー好きはぜひ観ましょう。

あと、銀塩フィルム写真が好きな方もぜひ観ましょう。

それでは詳しい感想をどうぞ。




※以下、ネタバレを含みます。ご了承ください。


冒頭でタイトルが表示されないのですばらしい。
配給会社の名前とかが街のレンガとか道路とかに書かれていていきなり面白いですね。

主人公のウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は雑誌の雑誌「LIFE」のネガフィルムの管理や現像なんかを担当している42歳。
彼には悪い癖があって、ときどき“思考世界<シンキングワールド>”に入ってしまい、妄想を繰り広げてしまう。現実ではその場でじっと動かず、固まってしまう。
精神医学的に考えれば何らかの疾患や障害と診断されそうですが、原作小説『虹を掴む男』(ジェームズ・サーバー)は1939年発表、映画『虹を掴む男』も1947年と半世紀以上も昔のもの。しかしちゃんと仕事もこなせているし、物語後半では改善がみられるので重大なものではなさそうです。

辛うじてあらすじだけは読んでから観に行ったのでついていけましたが、まったく何も事前情報無しで観ていたら、駅からマンションの窓にジャンプして飛び込み、ガス爆発の直前に犬を救助し、さらにその犬の義足もゲットして瞬時に1階まで降りて、しかもそのマンションがたまたま職場で気になっている同僚・シェリル・メリホフ(クリステン・ウィグ)の部屋があるマンションで、犬はシェリルの飼い犬で、ガス爆発に気づいた理由は犬がガスの臭いで吠えていたから……ってな妄想に完全に面食らって、ついていけなくなっていたかもしれません。

ついていけなくなったらなったでそれは面白そうだったので、失敗したなとちょっと思いました。事前情報無しで1回観て、あらすじとか感想とかチェックしてからもう1回観る、という楽しみ方のほうが良かったな。

まあ、先行きましょう。

ウォルターは42歳の誕生日の朝に「LIFE」誌がどこかの企業に買収され、ウェブ部門に統括されて部署再編・人員削減の転機に立ち会ってしまいます。
ケーキを届けてくれる妹が登場しますが、何の説明もないので「なんだ!?」ってなりますが、なんか家族のこととか親しげに話しているし、親族かなあって推測するしかない(笑) しかし、職場にケーキって(笑)
この辺のちぐはぐでミスマッチなコメディはベン・スティラーらしいですね。

写真家のショーン・オコンネル(ショーン・ペン)からフィルムとプレゼントである財布が届いていて、手紙には次の「LIFE」の表紙は25番のネガを使えと書いてある。しかし、25番が欠けており、箱のなかや他の郵便物を探しても見つからない。
上司のヒゲからせっつかれるが、適当に言い訳してごまかすという有り様。
フィルム現像の専門用語で煙に巻くやりとりがなかなか面白いです。

ショーンの居所がわからず、前後の写真から手がかりを探そうとするが、うまくいかない。
シェリルも言っていましたが、こういうのってミッシング・リンクって言うんでしたっけ?

24:カーブを描いたよくわからないもの、25:「LIFE」の真髄(欠品)、26:水、27:誰かの親指
といった具合です。

水の写真の中に文字が発見され、どうやらこれは海の写真で、文字は船の名前、そして港のイニシャルであるという手がかりが見つかりました。
ヘタな推理小説よりも面白い気がしますね。ベン・スティラーの才が光ります。

その船の名前と港のイニシャルを検索してみると、グリーンランドであることが判明。
ショーンが挑戦してきているかのような演出がありますが、最後まで観ると完全にずれていますね。よく探せ、と。

実際家で財布を捨てるシーンで思いましたもん。あ、その財布の中よく探した? って。そこだけ残念でしたねー。財布を普通にテーブルの上とかに置いて旅立ったらわかんなかったかも。

グリーンランドのパブで泥酔したヘリコプターパイロットの運転するヘリコプターで船に向かうウォルター。
海にダイブしますが、「凍傷まであと1分ある!」というセリフが印象的。
5月とはいえ、グリーンランドってもはや北極ですからね。

そういや「グリーンランドって、国の?」とか言ってる時点でグリーンランド=未知の島という感じが出ていますね。

みかんケーキの包み紙に書いてあったショーンの行き先メモを頼りに、アイスランドへ。このみかんケーキが伏線になっていていいですね。
「みかん」をどういう単語でどういう発音をしていたのか忘れましたが気になります。高校受験のときに、「みかんは外国では馴染みがないから、温州みかんの原産地である鹿児島県の旧国名・薩摩『Satsuma』って呼ばれてるんだよ」って習ったんですが、どうも違うみたいですね。

アイスランドの道の途中のホテルでスケボーを手に入れるウォルター。
この作品から読み取れることわざは、「芸は身を助く」ですね。
僕はスケボーに乗ることすらできませんから。子供のころ練習したんですが、てんでダメでした。

スケボーでアイスランドの風光明媚な道路を滑走するの楽しいですね! いや観てるだけですが……それでも楽しい!

火山の噴火に向かうプロペラ機の上に乗る男が一人……カメラを構えているように見えますね。
「ショーン」とつぶやくウォルター。ここも印象的なシーンです。命知らずだけど、かっこいいですね。

飛び去ったショーンにコンタクトする方法はもうないので、ひとまず行き先メモの手がかりを探りに一旦帰国。カタカナで書いてあれば日本人なら誰でも地名は検索すればわかりそうですが、アルファベットで書かれているとなると、それが英語なのかドイツ語なのかフランス語なのかラテン語なのかわからないですからね。特に地名は意味を成す単語で構成されているのでなければわかりっこないですね。

辛うじて英語っぽい地名は「Warlocks」だけ。
でも、本当は「Warlords」。ショーンのスペルミスだと勘違いしちゃった人は残念でした。字のクセとか、紙の材質とかで、「-cks」が「-rds」に“見えた”ってだけですね。
「r」が「v」に読み違えられたり。これは自分の経験ですが。筆記体とかもありますからねぇ。
日本語圏だと「ク」と「ワ」、「コ」と「ユ」、「か」と「や」とかですかねぇ。
どうでもいい話でしたが、なまじ言語学に興味あるだけにこういうことを考えて観ちゃいますね。

「LIFE」誌のオフィスは引き払われたというか、大勢解雇されたもんですから大掛かりな整理がなされていますね。
看板とか「LIFE ONLINE」になってたり。僕は紙媒体の本が好きなので電子書籍は滅多に買わないんですが、Web雑誌やWeb新聞の購読もしないですね。だから寂しいものがあります。何もアメリカに限った話ではなく、日本でもよくあることですので。

そして、次の行き先予定地、アフガニスタンはヒマラヤへ。
たびたび出てくるeハーモニーのトッド(パットン・オズワルト)から電話かかってきますが、ヒマラヤでも電波通じるんだスゲーって思いましたね。衛星電波かな? 日本だとあまり馴染みの薄いものですね。海外行ったら日本で契約してるsimは使えないっていう認識が普通ですからねぇ。パケット通信や国際電話で何十万……って話もよくありますし。

ユキヒョウの写真を撮ろうとしているショーンに遭遇。
すごい望遠レンズだ!!

フィルム一眼レフにはフィルムならではの良さがあって、味や質感はもちろんデジタル一眼なんかよりずっといいです。
光に強いので、雪の降り積もった山間から顔をのぞかせるユキヒョウを取るのにはデジタルは不向きでしょうね。雪に反射する光と山の陰とのコントラストが難しいです。ただ、後で加工すればどうとでもなりそうですが。
デジタルはなんでも後で加工できてしまうので、そのままの味や純粋さというか純朴な感じがなくて、のっぺりとした作られた感じになってしまうのが欠点ですね。
気温低下にも弱いので、ちゃんとそれ用のを買わないとダメでしょうしね。フィルム一眼ならこの点はほぼ心配なしです(状況にもよりますが)。

偉ぶって書いてますが、特にフィルム一眼レフの信奉者というわけではないです。
ただ、デジタルだけがもてはやされて、アナログ=古いもの、デジタルより劣るものって決めつけるのはよくないです。
デジタルに優るもの、それは写真、音楽、本(印刷物)ですね。
音楽に関してはテーマ外なのでいいとして、フィルム写真や印刷物が好きな人は、僕と同じように、きっとこの映画で共感するところが多かったはずです。

フィルム写真より優るものがあります。それは人間の目であり、記憶であり、体験です。
人間の目は何画素? みたいな記事が少し前に流行りましたが、写真に留めておくよりも、目で見て、記憶して、それを心の中にしまっておく体験こそ、どんな道具で生み出されたものよりも優るのです。
そしてそんな一瞬をカメラのシャッター音や構図決めに邪魔されたくない……。ショーンの気持ちがすごくよくわかりますし、共感できますね。

実に幸福感のあふれるシーンでしたし、映画でした。その後のサッカーのシーンが特にそう感じさせてくれるんですよ。サッカーしてるだけなのに、なぜか。

ヒマラヤのシェルパからもらった横笛が原因で空港の税関に勾留されたとき、eハーモニーのトッドが身元引受人として来てくれるシーンが好き。「ロスに知り合いはいないのか?」って税関職員に問われたときのウォールターの「あ、そういえば……」という表情も好き。

捨てた財布は母親が拾ってとっておいてくれたし、その中に入れられてたネガに写っていたのは仕事をするウォルターだったり、シェリルの息子から信頼を得ているし、シェリルとはうまくいきそうだし、妹の仕事もうまくいきそうだし(終盤で初めて女優だと判明)。
美しい物語ですね。オススメです。






あと――
最近は「うれしい」とか「たのしい」とか「しあわせ」だとか感じることが無かったのですが、この映画を観ている間はたのしいとかしあわせだとか感じられていましたね。サッカーのシーンで感極まった感じですが、ラストもため息がでるくらい美しかった。まあ主人公はクビにされちゃっていますが、それでも美しいと思えた。ウォルターの旅を受けて、再出発というメッセージも含まれている気がしますし。
でもフィクションからでしかしあわせだと思える時間を得られないと思うと哀しくもありますが、まったく無いよりかはマシかなと。
なによりやっぱり「映画が好き」だということを再認識できたし。
この映画を観られてよかった。本当にそう思います。

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