2013年11月20日

エリジウム

結構日が経っちゃいましたが、ニール・ブロムカンプ監督・脚本、マット・デイモン主演『エリジウム』を観たので感想を書きます。

崩壊した地球に住む人々と、新たに作られたスペースコロニーに住む人々の対立構造がメインテーマかなと観る前は思っていましたが、やや予想外なテーマを扱っていました。予想外ではありましたが、SFを現在の延長線上のものと捉えた場合、当然起こりうる問題でもあるのかなと感じました。

最初はFINAL FANTASY 13に似てるのかなーと思っていましたが、全然違いましたね。
あと僕が今書いてるSF小説に結構近い気がします。パクリと言われないようにしたいですね。

では簡潔ながら感想を。




※以下ネタバレを含みます。ご了承ください。



舞台は荒廃した地球。政治的な組織はなく、スペースコロニー「エリジウム」の人間が管理している。人口が爆発的に増え、食べるものに困っている有様。工場で勤務するか、泥棒になるか、レジスタンスとしてエリジウムに不法侵入するかといった選択肢しか残されていない模様。
エリジウムは科学技術が発展していて、富裕層の人しかIDを与えられない、まさにマルクス主義全開の上部・下部構造ですね。

トム・クルーズ主演『オブリビオン』を観た方ならここで「スペースコロニー『エリジウム』はまやかしの存在じゃないのか?」という疑問を抱くかと思いますが、ちゃんとエリジウム内の様子が出てくるので疑問は消えますね。
どんな人が住んでるのかというと、政治家、投資家、セレブなど、上流階級といった感じですね。
文明が発達しすぎると過去に回帰するという法則が当てはまっています。

主人公のマックス(マット・デイモン)も工場で働く人々のうちのひとりだが、以前は車泥棒をやっていたとか。
車=裕福というシンボルもいいですね。

工場ではエリジウムで使われているドロイド兵(いわゆるロボット)が作られており、マックスは放射線による最終的な耐性実験を行う部門にいるようですね。
ある日、ロボットを載せた台が放射線室の扉にひっかかってしまい、扉が閉まらなくなってしまう。
ここで上司が一言「中に入って直せ」。
プロレタリア的展開です。マックスは中に入って直しますが、予想されうる最悪の展開に。致死量の放射線を浴びてしまいます。

エリジウムにはどんな病気もたちどころに治せる「医療ポッド」なる治療用のベッドがあります。
骨折や下半身不随や白血病、それから顔面の大半が手榴弾で吹き飛んだとしても、治せるようです。治せないものは「死」だけといった具合でしょうね。
そんなものが実現可能かどうかはさておき、余命5日と宣告されたマックスはエリジウムを目指します。
まずは病院に行ったのですが、昔一緒にエリジウムへ行こうと約束した女性、フレイが出てきますが、冷たい印象。
病院内には治療を求める人がごった返しているところや、エリジウムに密航しようと群がる人々に注目。
この作品の大きなテーマ、そして現在にも問題を提起しています。

医療の問題について。
アメリカは国民皆保険がありません。数年前も健康保険導入をめぐってティーパーティーと対立し、問題視された通りです。
日本でもTPPによって、国民皆保険の存続が危ぶまれています。
病人は多い、しかし金もなければ医療技術もない。それが『エリジウム』が現代人に投げかける最大のテーマです。

マックスはレジスタンス組織のスパイダーなる人物を頼り、エリジウムに行くことを企てますが、足元を見られ、地球にいる上流階級の人間の記憶を奪えと言ってきます。どうやら記憶はデータ化、あるいはデータとして扱える技術があるようですね。

マックスは余命5日なので肉体的に危険な状態ですが、サイボーグのような体にされてしまいます(これじゃあ治ってもサイボーグのままじゃんって思いましたけど、マックスは了承する。きっとこの時点で覚悟していたのかもしれませんね)。
工場の管理者を襲うことを決意。マックスを解雇させた当本人で、ちょうど都合の良いことに(いや悪いことに)エリジウムで軍事的指揮を執っているデラコートとエリジウム下克上計画を企てているところでした。
つまり、デラコートがエリジウムのトップとして登録されるよう、エリジウム内のサーバーのプログラムコードを書き換えるということですね。すべてが電子機器による認証や管理を行っていますから、書き換えてリブートすれば可能なようです。
デラコートがあまりにも調子に乗っているので、エリジウムのプログラムコードを盗んだマックスたちを狙う刺客、クルーガーに反旗を翻されたのは痛快でした。

マックスはあえて情報をクルーガーに渡すことでエリジウムへ行くことに成功しますが、フレイもマックスを匿った罪で連行されています。
が、フレイの娘も一緒に行くことに成功しました。彼女は白血病を患っており、医療ポッドが必要です。白血病は医療ポッドがなくても治療可能ですが、荒廃した地球の設備では無理そうですからね。
このあたりの脚本はうまいなあと思いました。連携が思うようにとれていなかったり、逆境を利用したりするところが高評価です。

マックスはクルーガーと戦いながら、奴を倒し、スパイダーと合流し、エリジウムのプログラムコードを改竄してリブートをかけます。
改竄内容は、太陽系の人類すべてがエリジウムの住民として登録されること。
しかし、マックスの頭の中にダウンロードされた記憶からリブートするので、マックスの体が負荷に耐えられず、死んでしまいます。

フレイの娘は最初はIDがないので医療ポッドを使うことができませんが、今度は使えたので治りました。
マックスが「次は大丈夫」って言ったのはこの状況を予想してのことでしょうね。つまり「俺もあとから行く」という約束は最初から破る気だったんでしょうね。ブルジョアどもめ。

その後、地球に向けて医療ロボットが医療ポッドや薬を携えて向かいます。
国民皆保険が実現されましたね。

SFとして人口問題や環境問題が挙げられるのはありふれていますが、『エリジウム』は医療問題をここまで押し出してきたので非常に興味深く、面白い作品でした。

構造こそはマルクス主義ですが、ただのSFに興味がない方はぜひ観てみてはいかがでしょうか。

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