2013年4月28日

クラウド・アトラス

映画『クラウド・アトラス』を観ました。おそらく今年最高の映画でしょう。

異なる6つの時代を描いた最高にめまぐるしい場面展開、そしてそれらが相互関係してくる超時空的SFともいえる傑作ですね。
最初はどの登場人物がどの時代の人なのか把握するのに苦労するかもしれませんが、わかりにくいわけでもありませんし、すぐ理解でき、すんなりストーリーに没入できると思います。

1つの時代のできごとが次の時代に影響を与えている描写が特に面白いですし、キャラクターたちも色濃くて個性的な人ばっかりですからね。
主演はトム・ハンクス。というか、誰が主演とかじゃなくて、全員主演。一人二役どころか、三役、四役やりすぎていて、エンドロールで笑った。

観ていてまったく飽きないし、次はどうなるのか、結局この時代がなぜそうなっているのか、前の時代の結末を早く知りたくて、ぐいぐい引きこまれてしまいます。
原作小説も買いたいですし、ブルーレイも欲しいレベルですね。
というか、ブルーレイの発売がもう決まっているようです。7月10日!? 早すぎる。

もっとじっくり感想を書きたいのですが、時間もなく、最近感想を書くのが益々苦手になってきたので深入りはしません。
そもそも映画の感想であまり深入りするのもよくない=実際に観ていただきたい、そして僕の感想なんかに左右されず各々自由に楽しめばいいと思いますしね(僕が本当につまらないと思った映画はブログに書いてすらいないので、少しでも興味を持っていただければそれでいいのです)。

では感想を書きましょう↓




※以下、ネタバレを含みます。ご了承ください。


物語は最も未来の時代から始まります。
老人となったザックリーが悪魔・オールド・ジョージーの恐怖を語る。

「行き過ぎた文明が滅んだとき、文明は逆行する」――という法則が考えられており。この物語にも当てはまります。
あるいは、隠れたループものと取ることも可能かもしれません。

それぞれの時代で主役となっている人物にはどこかしらに彗星の痣があって、ジョジョっぽいなあと思いつつ、「生まれ変わり」説も浮上してくるも、数奇な運命ということに変わりはありませんね。
マーク(スティグマ)は興味深い設定です。

物語の構造を一息で説明します。
いいですか。

19世紀、弁護士(奴隷船の公証人)アダム・ユーイングが病気にかかり、闘病の末生きて太平洋を渡った体験を書物にした「アダム・ユーイングの太平洋航海記」を読んだ20世紀の作曲家ロバート・フロビシャーが書いた「クラウドアトラス六重奏」を聴き、彼が同性愛の恋人シックススミス博士に送っていた手紙を読んだジャーナリストであるルイサ・レイが原子力発電と石油利権の陰謀を突き止めようとして殺された顛末をもとにした小説を読んだ21世紀の小説編集者ティモシー・カベンディッシュが殺人を犯した作家ダーモットのカルト的人気上昇により大金を得るが彼の子分たちに脅され、ティモシーは兄に相談するも老人介護施設に監禁同様に入院させられる一部始終を映画化した「ティモシー・カベンディッシュのおぞましい試練」を、2144年のネオ・ソウルシティのクローン人間の1人ソンミ451はユナ939と倉庫に忍び込み携帯端末で観るが端末は壊れており一部しか観られず、レジスタンス組織のヘジュ・チャンに連れだされ彼の部屋で全編を観、世界が狂っている原因、それは栄養剤ソープは実は自分たちと同じクローン人間のタンパク質を元にしているということを知った彼女は預言者として革命行動に加わり、ソンミを教祖として崇める文明崩壊後の世界でのザックリーは文明都市から来訪したメロニムに手を貸し、別の惑星へと移住する……。

と、こんな感じです(笑)
ぜんぜんわかないですか? じゃあ整理しましょう(笑)

アダム・ユーイング著「アダム・ユーイングの太平洋航海記」:ロバート・フロビシャーが読む。

ロバート・フロビシャー作曲「クラウドアトラス六重奏」および手紙:ルイサ・レイが聴く、読む。

ルイサ・レイを描いたノンフィクション小説:ティモシー・カベンディッシュが読む。

ティモシー・カベンディッシュ監督「ティモシー・カベンディッシュのおぞましい試練」:ソンミが観る。

ソンミの預言:ザックリーの住む島民たちが信じている。

このように、入れ子構造になっているわけです。
が、どれかがフィクションインフィクションではなく、連続する一つの時系列になっているのがまた面白い点ですね。
映画自体は6つの時代、6つの場所をバラバラに移動しながら進みますが、実は場面転換にとても気を遣っていて、細かい所で相互関係的なしかけがあります。そこを注目するのもとても面白いですよ。同じ物を出したり、同じ音を出したり、同じ行動をさせたり。芸が非常に細かいです。

登場人物たちの同役はまったく気づかないレベルで見た目が変わっており、例えばトム・ハンクスはザックリー役と、航海記の医者、作家ダーモット(こわもての柄の悪い作家なんですよ)を兼ねていて、アダム・ユーイング役とヘジュ・チャン役は同じジム・スタージェスが演じていたりと、エンドロールは絶対に見逃せない作品です。
エンドロールが絶対に見逃せない作品ってあまりなくて、パイレーツ・オブ・カビリアンシリーズ以来でしょうか(パイレーツ・オブ・カビリアンシリーズはエンドロール後に次回作につながる重要な伏線映像がある)。
もちろんキャラクターの映像付きで役名がでますので、文字だけじゃない楽しみがあります。

文明崩壊の理由は明かされませんが、ルイサ・レイが原子力発電や石油利権について調査していたことを考えると、恐らくは第三次世界大戦でしょうね。
しかも、それは最も未来の世界でメロニムの上司が「君の被曝量は限界だ」とかなんとか言うので、確実に核戦争が起こったことが伺えます。ネオ・ソウルシティも観るも無残に崩壊しています。ヘジュたち革命組織がルイサ・レイの時代から長らく続いていた緊張状態を破ったのでしょう。
時代と時代の間になにがあったか、これは想像で補うしかありません。説明不足といってしまえばそれまででしょうが、そこを想像する楽しみもあるのだと思います。そういう不足している部分も含めて、この作品は愛せます。

ループものだと言ったのは、最も過去の時代=アダム・ユーイングの時代で、崖の間の砂浜で砂を掘っている老人が「食人種族の歯」を探して、それを売っているというシーンが冒頭にあります。そして、最も未来の時代=ザックリーの時代で食人種族が登場し、歯を吐き捨てるシーンがあった(と思う)からです。
食人種族によって、時代がループしていると考えることも可能ですね。いろいろな解釈ができるので非常に物語が豊かで膨らみがありますね。

そして近々ブログにまとめようと思っているのですが、この物語は「旧SF」です。
「旧SF」とはなにかというと、宗教(神)や未知の存在(UFOや宇宙人)や超能力といった、超自然的な意識が介在しているSFのことです。僕が定義付けたジャンルです。最近アーサー・C・クラークの『楽園の泉』を読んで考えました。
『スター・ウォーズ』や『マトリックス』(ちなみに、スミス役のヒューゴ・ウィービングも登場しています)、『アイアン・スカイ』、『LOOPER』なんかは「旧SF」です。
じゃあ「新SF」はなにかというと、難しいのですが、『TRON』、『トータルリコール(1990年)』、『2012』あたりでしょうか。『2012』はマヤ暦が元ネタだから線引が難しいな。宗教とSFは切っても切れない関係なんだけど(遠藤浩輝『EDEN』や上記『楽園の泉』を読むとよくわかる)、そこから脱却しようとして初めて斬新なストーリー作りができるんじゃないかなと最近思っています。ここで議論をぶちまけることでもないので、後日(といってもいつになるかわからないが)まとめます。

でも『クラウドアトラス』はかなり斬新だと思うし、物語作りも実にうまい。
ソンミが教祖みたくなって、お告げだなんだ、預言がどうの言ってるさまは、ネオ・ソウルシティでの物語がどういう結末を迎えるかわからない観客にとって不気味ですよね。しかもネオ・ソウルシティでの物語はソンミの取り調べのような形で、すべてが回想シーン。こういう物語作りの手法に観客を引き込むパワーを感じます。それも、圧倒的な。

あとは航海から戻ったアダム・ユーイングの結婚(駆け落ち)相手の父親がリンカーン大統領に見える。気のせいかな?
先日『リンカーン』を観たので感想を書けたら書きます。ヴァンパイアハンターのほうが面白かったので、書くかどうかわかりませんが。ちなみに、ヴァンパイアハンターの続編がスピルバーグの『リンカーン』だと考えて、2つで1セットで観るとなんか楽しくなります。

悪魔オールド・ジョージーの存在なんかも謎ですよね。
放射能の影響とかあるんだろうか(そこまで行くと突飛すぎるか)。

ソンミとヘジュのセクロスシーンは意外と嫌じゃなかった。たいていの映画の濡れ場は嫌なんだけど、ヘジュがイケメンすぎて好感が持てるから……って、僕はホモセクシャルじゃないですよ(笑)

ああだこうだと考えながら物語を追っていると置いていかれてしまうので、やっぱり最初は引っ張られるようにして観て、2回目でじっくり考えながら観る……3回目は細かい部分をチェックして4回目は……と、何度も観たくなる名作でした。
何度も観たくなる映画って結構ありますが、『クラウドアトラス』は自信を持っておすすめできる映画ですね。早くブルーレイ買ってもう1回観たいなあ(笑)

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