2012年11月15日

アルゴ

CIAが18年間極秘情報として扱ってきたイランアメリカ大使館人質事件の救出作戦に則って描かれた作品です。
事件も作戦も実際に起こって、それをもとにしたノンフィクションにかなり近い作品ですね。

相変わらず事前情報はなにもチェックせず観に行きました。
では感想いきましょう。



※以下、ネタバレを含みます。ご了承ください。


舞台は1979年。実際のデモ映像と映画のために撮影された映像が交互に出てくる。
そういうリアルの情動が入ってくると当時の様子が掴みやすくて好印象です。
アメリカ大使館にデモ隊が流れ込み、ほとんど武力制圧されちゃいますね。個人的には、どっちの側にいても怖いなと思った。襲う側も、襲われる側も怖い、内包された恐怖のにおいが強くて、狂気を感じました。たぶんそれは当時の人々も感じていたことだと思う。特にそこにたまたま居合わせた一般人のビザ取得者なんかは。

6人だけが捕まらずに脱出します。カナダ大使の私邸に押しかけて匿ってもらうわけですが、なぜこの6人だけ脱出できて、あとの何十人もの人たちは脱出できなかったのだろうか?
もちろん大勢で裏口から逃げようとするとデモ隊にその動きがばれてしまうし、市中で身動きもとれない。なんら疑問なく話が進むので、そのあたりちゃんと言及してほしかったな。6人の立場や身分は関係ない。
それで、アメリカ大使館に勤務している人全員を人質にとって自分たちの要望(かつての愚君を自分たちの手で裁判にかけ、処刑したい)を通したいデモ隊ですが、シュレッダーにかけた名簿をみつけられてしまう。
焼却炉が壊れたので仕方なくシュレッダーを使ったわけですが、子供たちがパズルのおもちゃのようにみるみる修復していきます。その様子もどこか狂気めいていました。エンドロールの映像を見る限り、その修復作業も実際のことのようですね。
いつの時代も怒りに支配されてしまった人のやることは変わらず、このイランのデモ隊も、今の中国で起きてる反日デモもまったく同じだと思った。やり方はもちろん当時のイランのほうが過激ですが、わけもわからず混乱に乗じて反米感情(というか欧米諸国全体に対しての反発感情)をぶつけるのも反日感情をぶつけるのも、同じ狂気の根にあるなと。
やりたいほうだいやっているように見えてもちゃんとした主義主張を持っていたはずなのに、いつしか本来の目的を忘れて本当にやりたいほうだいやっちゃうという。
でも武力鎮圧する前に、なんとか理性的な解決策を巡らせるのが近代化だと思うんです。そこで監督兼主演のベン・アフレック演じるCIA局員トニーが登場。
名簿が修復されてしまえば6人が脱出したことがばれてしまいます(まあ、この時点でほとんどばれかかってるんだけど)。なんとかデモ隊に捕まる前にアメリカ側で救出しなければなりません。この救出作戦こそ、アメリカ政府とCIAが18年間封印してきた人質救出作戦なのです。
最初はクソみたいな作戦しか出てこず、やきもきするトニーでしたが、息子と電話で話す最中に観た『猿の惑星』からヒントを得ます。ニセ映画作戦。作戦を思いつくまでの過程がいいし、協力者も個性的な人が揃った。
デザインや美術、キャラ作り担当によるハリウッドの立て看板がぼろぼろになっている映像と併せてのハリウッド批判は痛烈。なにかを作るようでいてなにも作らない。まさにフェイク・ムービーと同じだと。
監督もいいよね。おれが作るからにはフェイク・ムービーでもヒット作だ! って(笑) 脚本家への交渉もなかなか面白い。
軍事や政治の話ばかりでなく、それぞれの家族にも焦点を当てるのもこの作品の魅力的なところ。家族の存在は登場人物をより理解するための重要なピースだと考えるようになってから、そういう人物設定も注目しちゃいますね。まあ、荒木飛呂彦先生のおかげですが。

いざ、ニセ映画『アルゴ』を大々的にアピールし、作戦の段取りをつける。少しだけニセ映画の撮影シーンが映るわけですが、『ヒューゴの不思議な発明』が好きな方はとても楽しめると思いますよ。古き良き作風。
大使館の6人は映画の製作スタッフという役回り。自らの人物設定を頭に叩き込んでいる最中のセリフがすごく好きだ。「空港で銃をつきつけられても偽装なんてできるのか?」という質問に対し、トニーが「偽装だけが銃から身を守る」と答える。それで一気にやる気が高まる。生きるか死ぬかの吊り橋作戦なのに、絶対やり通す、生きて帰るという気持ちがみなぎっていく。この作品のメインシーンはここでしょうね。数ヶ月間外に出てないのに、やる気が起こる。生と死の分かれ目の極限状態にいたことはないので、生への渇望といったものはよくわからないんだけど、いつまでもあんな生活は続けられないし、どうせこの作戦を遂行できなければデモ隊に見つかって空港へ行くまでもなくジ・エンドなわけですから。やるしかないんだよね。渋っていた2人も乗ってくれる。
バザールの視察で頭のおかしい変人現る。現代日本にもああいうオヤジよくいるよな。揉め事を起こすと警察(今のような警察ではなく、暴力、拷問なんでもあり)が出てきちゃうわけだが、それよりも問題は街中に隠れた諜報員。写真を取られまくっています。いくら変装しててもこれではばれちゃいますね。

さて、いよいよ空港へ行くわけですが、その直前、CIA上層部からニセ映画作戦は中止だという歯止めがかかる。軍事介入で武力制圧という方針に切り替わったのだ。これにはトニーも寝耳に水で、視聴者ともどもCIA上層部は馬鹿だ、阿呆だと思わされることに。戦争の火種になるって言ったのはお前らじゃなかったのかと。ニセ映画作戦実行のサインももらったよね?
なんだかわけがわからない事態に。ハラハラしちゃいましたね。映画をよりよいものにするために、なんだかんだニセ映画作戦を続行するんだろうとわかってはいても、トニーが直前まで動かず、黙認しているようで実はすごい勢いで考えているんだが、手に汗を握りますね。
6人が彼の遅刻を気にし始めたころ、ごり押し作戦スタート。CIA本部はてんやわんやになる。チケットの予約すら取り消してますからね。よくあれ間に合わせられたなぁと。
最終チェックで捕まってしまうわけですが、必死に映画製作スタッフであることを証明しようとする。製作スタジオへの電話もぎりぎりだ。もしあの電話をとれてなかったら彼ら7人は処刑されてしまっていたかもと考えると空恐ろしいです。
ぎりぎりの作戦で、それをぎりぎりのタイミングで、ぎりぎりの瀬戸際で逆転させるという悪くない話。
飛行機に乗ったあともなにが起こるかわからず、じりじりと祈るような気持ちで感情移入してしまいました。無事に領空を離れれば、そこはイランの治安外ですから、彼らは祝福し合う。同じ飛行機に乗っていた人たちは冷たい目で何事かと見ていますが、その喜びに説明はいらない。

その後、イランのアメリカ大使館で捕らえられていた人質も無事開放。444日間ものあいだ、監禁されていたとか。
空港でのやりとりもおもしろかったですね。ただ気になる点がひとつだけ残ってしまっていて、それは知らずに人質を逃がした航空管制員たちがその後どうなったのかということ。銃をつきつけられているけど、まさか殺されてはいないよね……? そういう部分も考えるとハッピーエンドではなくなります。イランのその後の情勢も考えるとなおさら。

とても面白かったのですが、好き嫌いはハッキリわかれてしまいそう。僕は好きですね。
18年間極秘にされてきたこの実話を、知ることができて実に良かったし、それだけでも観る価値がありますね。
ARGO, Fuckin' yourself!

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