2012年8月29日

トータルリコール

コリン・ファレル主演のSF映画、トータルリコールを観てきました。
ダイハード4.0の監督の作品? ダイハードは1を観て微妙だなと思って以来続きを観ていないんですよねー。4.0は面白いという感想を聞きましたが、2が面白いという感想を聞けなければ観ないかも。

さて、今年2012年公開のこちらの作品、1990年に公開されたアーノルド・シュワルツェネッガー主演の同名作品のリメイクです。
リメイク版を観てから、シュワちゃん主演の旧作を観ました。感想もこの順番でいきます。

予告のときからすごく興味あって、過去作があるなら過去作も観たいなーと思っていました。
でも観終わったあとはちょっぴり残念に感じました。ストーリーは期待外れでしたね。まあ、1966年に公開された小説をもとにしているのでそれも仕方ないような気もしますが……。
映像面に関しては旧作、リメイク作ともに及第点です。素晴らしいね。役者の演技もいいし、美術もいい。ストーリーさえ良ければねー。なんとも惜しい作品です。

では感想行きましょう。



※以下、かなりのネタバレを含みます。ご容赦ください。


『トータルリコール』 2012年

主演はコリン・ファレル。舞台は近未来の地球。
ストーリーはSFだけど、思いっきりマルクス主義全開です。マルキシズムを絵に描いたようなストーリーです。
僕は左翼ではなく、中庸なので、勘違いされませんよう。

化学戦争終結後、地球のほとんどがアネクメーネ(居住不可能地域=“ノーゾーン”と呼ばれている)と化した世界。残ったのはブリテン連邦(グレートブリテン島)とコロニー(オーストラリア大陸)という2つの都市のみ。
ブリテン連邦が上部構造で、コロニーが下部構造です。ブリテン連邦の警備アンドロイド(シンセティック)を作る労働力として、コロニー住民は上部構造のブルジョワジーたちに搾取されるプロレタリアートといったところですね。
そして、コロニー住民はブリテン連邦まで通わなければなりません。ブリテン連邦にある工場で、管理されているわけですね。
仕事に入るためにタイムカードを押していくシーンは『TIME』を思い出しますね。
テロや暴動も起きていたり、格差是正を求めるレジスタンス組織が事件を起こしていたりもします。ここのテレビニュースで組織のボスがマサイアス、今回の主犯はカール・ハウザーであるらしいと言っています。

連邦とコロニー間の移動は「フォール」と呼ばれるエレベーターを使います。
このフォールが面白すぎてやばいんだ。オーストラリア大陸からブリテン島まで、地球の核を通過して1本のエレベーターが通ってるんだけど、なんと17分で行ける。核を通過するときは重力の反転が起こって、一瞬無重力になる。
内部のデザインもさながら宇宙船のよう。
でも少し様子がおかしい。まるで囚人の護送車のような雰囲気が内部には立ち込めている。
この辺りがマルクス主義全開なんですよね。溜まりに溜まった鬱憤、でも、生活のためには日銭を稼がなければならない。コロニーにはゴミ仕事しか転がっていないだろうし、ホームレスや行き場をなくした若者がたむろしていたりする。
そして、下部構造は貴族たち(連邦住民)と同じような仕事を与えられることもない。出身地・居住地で振り分けられてしまう……。そういうやりきれなさを描くことそのものがマルクス主義なんだよ。

いつも同じ席ということになにかしら意味があるのだろうかと疑ったけど、特になにもなかったね。普通に移動しちゃったし。残念。
指定席制だとしたら、いつも同じ席番が与えられることに違和感を感じて、実は主人公は起きてから寝るまでの生活を完全に監視されていて云々という展開もありだと思うんだけどな。
なにはともあれ、ビジュアルは満点。

主人公のダグラス・クエイドは悪夢を見ています。というか、そこから始まるんだけどねーすっ飛ばしちゃったねー。
いきなり始まるから、戸惑いましたが、途中でああ、これは夢か何かの導入なんだろうなということがわかるのでまあよし。
落ちそうになったメリーナをダグが掴みますが、お互い握り合わせた手を銃弾が貫き、メリーナ落下。ここに重大な伏線が張られているとは思いもよらず、なーんだ夢か、で、始まります。

コロニーの都市デザインはありがちな高層ビル群、でも、なんか浮いてる建造物もあるか? という迷宮のようなデザイン。高層に入り組んだ路地がいくつもあります。
(旧作を観ると気づくのですが、リアクターのデザインを踏襲しているような印象を受ける。リアクターを作ったのは火星のエイリアン、つまり先住民で、奴隷として搾取された下部構造だ)
夜の場面が多い。というか、日が当たらないと言ったほうが正しいか。朝目覚めたダグがベランダから街を見下ろしても、暗い中に光が灯っている。まあ、早朝ということもあるんだろうが……。地球の自転が云々という話にするとさらに設定がややこしいことになるので、ここでは空中に建造物を積み上げすぎて光が下まで届いていないという設定のほうがよさそうだ。

対して連邦は白くて清潔なデザイン。朝や昼間の場面が多い。
どこか無機質で、汚れがない。
連邦内においても貧富の格差は多少なりあるようで、浮遊する車とタイヤのついた車の2種類が存在しているようだ。

警備アンドロイドを作る仕事は「頭がおかしくなりそう」なほど退屈らしい。
僕は同じ仕事を繰り返す流れ作業は嫌いじゃなくて、黙々とやり続けてしまうため、そういうのが向いているのかもな~。
で、昇進の話も、連邦在住の奴が上に就くことになり、ダグ自身の昇進はなかったことにされ、いい加減嫌気が差すと。
作業中に、新人の奴に変なところ持つと手にボルトが刺さって危険だと言うシーンがあり、手の中心の傷を見せる。
うんざりしたダグは、記憶を売ってくれるというリコール社へ行くことに。ちなみに「REKALL社」

ここまではまだマルキシズム基盤のSFだな、まあ許せるかなというレベルで観ていたのですが、リコール社で大いに期待を裏切られることに。
僕はもっと、記憶を売り買いする話に特化しているものだと思っていたんです。リコール社をうまく利用して、機密情報や普通の人が体験しないような記憶(殺人とか)を高額で売りつけ、その金で別の記憶を買ったり、あるいはなんの変哲もない一般人の記憶から重大な情報を得たり。
世にも奇妙でちょっとこれに似た話があったような気がする。
で、機密情報の入った記憶はリコール社に売っぱらっているので、尋問されて自白剤のまされたり、記憶解析をされても頭の中にはない。別人がやってもいない罪の容疑者にされて、身代わりにしたりね。

そういった展開を予想していただけに、普通にマルクス主義という座布団の上に座っているだけのつまらないストーリーでした。
でも全体を見てしまうとつまらなく感じてしまうのですが、ところどころで面白い場面もありましたね。

リコール社はいかにも中国企業。装置は旧作を踏襲していることが分かりました。
質問が面白いですね。今までに体験したことを別の記憶として植えつけることはできない。このあたり、『インセプション』との絡みもあるかな?
で、いつも見る悪夢では自分が諜報員だということはわからず、ただ追手から逃げているといった描写だしダグ自身もそういっているので、完全に無意識に諜報員を選ぶ。
諜報員のほかに列挙された役名がうまく並列できているので、違和感がまったくない。観てる人はダグは本当の自分ではないということが予告からして判明しているので、奥深くに眠った真の記憶が反応しているんだとわかるわけです。うまいですよね。
途中で止めたために記憶が若干蘇り、かつ植物人間になることもなく、本来の体術も取り戻し、攻めてきた警備兵を倒します。家に戻ると奥さんに殺されかけ、とにかく逃げる。この逃げるシーンもなかなかいいですよね。
手の中に埋め込まれた発信機付きの携帯をガラス片を使って取り出すとか、それを見た若者が焦るとか、部分部分の展開は悪くないんですけどねー。インプリントの携帯はかなりナイスですが、義体化に近い気もしますね。
金庫のナンバーを手に入れ、アイテムを幾つか得たあとは連邦にある自分のアパートに行くことに。
フォールの検問所で顔が変わる首輪を使うもバレるという。ここはCMでも有名で、CG全開なんだけどすごく面白いシーンですよね。おばちゃんを演じた役者が旧作と同じ方と聞いてびっくりです。

逃げる途中、空飛ぶ車でメリーナが都合よく登場。ハイウェイの構造はなんとなくわかるが、下道の構造はいったいどうなっているのだろう? テキトーに走ってるわけじゃないよね? スターウォーズでも気になったことだが、何年経っても空飛ぶ車の交通網は気になったままだ。

そういえばダグがハリーにバーで「ピアノ弾けるか?」って訊いていますが、ハウザーのマンションにピアノがあり、しかも鍵が鍵盤っていうところにも潜在意識が働いていたんだろうなと、伏線の使い方に感心してしまいますね。本当に、これがマルクス主義じゃなければ……。
序盤でレジスタンス組織のボスはマサイアス、今回の事件の主犯はカール・ハウザーと目されており……といったニュース映像が流れているのもポイントですよね。ここに繋がってくる。
手の傷も労災じゃなくて、夢のなかで撃たれた銃弾によるもの。メリーナにも同じ傷が。ここでぞくっと来たね。伏線やべぇー! って。新人に自分の傷を見せて注意するだけのあんな些細なシーンが夢と現実の区別をつける重要なマークになるなんて!

ハリーが「ここはリコール社によって疑似体験させられている夢のなかの世界だ」とか言って説得にきますが、メリーナの涙を見て判断をつけるシーンは、後ほど旧作の感想の際に触れましょう。

連邦でもコロニーでもない場所、ノーゾーンへ赴き、ビル・ナイ演じるマサイアスと会うシーンですが、化学戦争終結後なら空気だけじゃなくて放射能とかもやばいんじゃないの? だったらもっとちゃんとした隔壁をつかって、放射能を分解する技術とかも登場させたりさ。ドアもあんな1枚扉じゃなくて、2重にするとか。このあたりの設定が微妙にあやふやですね。
意味不明なデザインのヘリコプターを使うぐらいならオスプレイMV-22を登場させて欲しかった。まあそれはバイオハザードで存分に観ましょう。

記憶のなかにレジスタンスを救う数式があるとか言って、安易にも記憶解析をしてしまう。すると居場所が特定される情報がコーヘイゲンに送信されるという仕組み。ハウザーは2重スパイだったんだよ!\なんだってー!/
ここの展開も面白い部分ですね。そのあとで、自分を決めるのは過去じゃなくて未来であるとメリーナかな、誰かに言われて、ハウザーでもダグでもなく、あくまでも自分の魂にしたがい、コーヘイゲンが手配した警備アンドロイドの乗るフォールをぶち壊しにいくことに。
後半の展開はかなり好きだな。途中までがマルクス主義全開なので少々きついところですが、後半からラストにかけての突っ走る展開は好きだ。
フォールのてっぺんでコーヘイゲンとバトルするシーンは、ギリギリだけど間に合ったーというお決まりのパターン。でも、ハウザー死亡か? 主人公死亡の映画は最近観てないからいいぞ、と思ったら見事復活。そばにいたメリーナに扮したローリーを手の傷で見破り、独立したコロニーを観てエンド。傷が絆に(笑)
でもやっぱり、ここはリコール社の夢のなかの世界だろうか……? 判断は、視聴者におまかせしますエンドでした。

SFとしてはかなり好評価なのですが、ストーリーがいかんせんうまくいってない感じ。最後に独立しちゃうところとか特に。下部構造が上部構造を打ち倒して革命成功という形なんでしょうが……。マルクス主義のテンプレートにハマっちゃっていますよね。そのあたりをうまくごまかすか、やわらげるかすればブルーレイを購入したくなるぐらいのものに仕上がったと思うんですけどね。そのまんますぎちゃいましたね。
別にマルクス主義が嫌いなわけじゃないんですよ。ディストピア(被完全管理社会)構想ならSFと相性もいいし。でもね、『追憶売ります』という原作タイトルや、記憶の売り買いってことで著名人にどんな記憶を買いたいですかというインタビューまでしてたじゃないですか。それなのに、リコール社はほとんどダシにしか使われてなくて、がっかりしたといいますか。
賛否両論あるでしょうねー。でもまあ、予想していたものとは違ったわけですけども、SFとしては完成度高いし好きなシーンもちょいちょいあるので、良作と言えるでしょうね。


『トータルリコール』 1990年

シュワちゃん主演。舞台はかなり未来の地球および火星。とはいえ、テレビはブラウン管ですけどね。90年に液晶モニターってなかったっけ? でも電車内にテレビを設置したのは未来予測になってるな。
いきなり火星とかいってびっくりですよ。リメイク版ではかけらも残ってないからねこの設定。しかも崖下に落ちて宇宙服のフェイスカバー割れて、顔がひどいことになっちゃうし。火星は真空だって言ってるんだけど、当時はそう考えられていたのかな……?
調べてみたら、フォボス2号の火星探査がちょうどこの頃か。打ち上げられたのは原作が発表されるよりもずっと後。まあ、火星の大気って二酸化炭素主成分とはいえかなり希薄のようだから、真空に近いって言っても別に間違ってるわけではないんだろうけどね。

序盤からいちゃいちゃするダグ(シュワちゃん)とローリー。イラッとした(笑)
仕事は建築作業員なのかな? 仕事に嫌気が差してリコール社(旧作も「REKALL社」)。ただ、諜報員のほかの役名がありふれたもので、諜報員(「Secret Agent」)が浮いてる(笑)
しかも、「別の自分へ変身する」とはどういうことなのか。単純に夢のなかで役を演じるっていうだけなのかな。
で、拒絶反応を起こして帰らされることに。記憶はまったく戻っていない。家の近くでハリーに呼び止められ、リコール社がどうだったか尋ねられ、テキトーにあしらって行こうとするもチンピラ(ハリーの仲間)に路地裏に連れて行かれてしまう。
で、本来の体術を発揮して殺す、と。
家に帰ったらローリーとバトル。

ああ、そうそう、面白かったのが、火星政府の長官であるコーヘイゲンが裏で手を引く組織が、“機関”って呼ばれてることですね。「まさか、“機関”の人間か!?」みたいなセリフが面白い。

で、その機関の連中から逃げるダグ。途中ホテルに隠れるんだけど、なぜホテルなんだ? と思ってしまった。狭いじゃないか。まあ、ダグはホテルに入った時点では発信機に気づいてなかったから仕方ないんだけど、そこで電話がかかってきて、発信機が頭のなかにあると。
そういえばリメイク版でも発信機のことで電話してきた奴がいたけど、彼は結局どっちの立場だったんでしょうね? コーヘイゲンの下で働いているように見えたけど、よくわからんよね。
旧作のこの電話の相手もよくわからん。後半でコーヘイゲンがカバンも布石の一部だったと言うから、まあコーヘイゲンの部下なんだろうね。

しかし旧作のアイテムは謎だ。頭の発信機を取り出すのに鼻に入れて、あんな取れんの? やべぇーと思った。取り出した発信機をネズミに運ばせて銃弾を消費させる考えはうまいですね。
そして次のシーンでいきなり火星へ! しかも着陸(笑)
検問所でダグが扮したおばちゃんはリメイク後も同じ人らしいという小ネタはもう書きましたね(笑) 年とってないんじゃないの? すごい。だってこれ、22年前だぜ?
あのアイテムが謎だ。爆発させたのはいいね。
あと、ホログラム装置。ホログラムのCG描写がかなりうまくて、リメイク後の変装首輪と同じようなブレというかノイズというか発生させていて、好きだなーあの描写。

メリーナに会うも追い返され、火星のホテルで説得人が来るシーン。ハリーは序盤で殺されているので、ここはどっかの誰か(たぶんコーヘイゲンの手下か、あるいは本当にリコール社の安全装置か)。
流れる汗を見て、これは夢ではなく、こいつは説得人であると見破るのだけど、もしかしたら本当に安全装置だったのかもしれない。というのも、旧作のトータルリコールは夢であるという設定らしいからだ。最後にホワイトアウトで真っ白になって終わるのはそのためらしい。
でも、夢じゃないほうがいいなー。旧作は流れる汗で見破ったり、リメイク版はメリーナの涙で見抜いたり。こういう「夢のなかだとは考えられない真実の要素」を無下にしたくないじゃないですか。自分がこれは夢であって、この夢を見続けるのは危険だ、目覚めなければならないと感じたのならば、あるいは本当に安全装置として助け舟を出されているのならば、冷や汗や涙など起きるはずもないですからね。リコール社にとってなんのメリットもありませんから。植物人間をまた生み出してしまえば、ただ社名に傷がつくだけですし。だから、夢ではなく真実であってほしいな。

火星にはさまざまな変異体(ミュータント)がいます。先住民のエイリアンが奴隷として搾取された結果、彼らは貧民層なのでしょうね。
リメイク版でおっぱいが3つの女性が登場したとき、これは『宇宙人ポール』のオマージュだ! と思ったものですが、旧作にも出てきてるので、『宇宙人ポール』がオマージュとして使ったことになるのかな?
それはともかく、リメイク版のマサイアス的存在であるクワトー(「火星のジョージ・ワシントンです」と言われている)の本拠地の場所と入り方にちょっと笑ってしまった。あんなふうに洞窟の奥の岩壁がぱかって開くなんて。
クワトーのビジュアルはまあまあかな、ヨーダっぽいな。読心術は、マインドスキャナーという大掛かりな装置を使って云々という話かと思ったら、まんま超能力だった。火星の先住エイリアンが太古の昔より受け継ぐ秘術というわけでもなく、単純にタレント。なんの面白みもない。

いったん捕まるも逃げ出し、敵を倒し、先住エイリアンが造った地下の氷を融解させる装置、リアクターを起動! 氷が水蒸気となって吹き出します。直前で火星の外へ投げ出されてしまったハウザーとメリーナはぎりぎりで助かるけど、コーヘイゲンは死亡。また顔がひどいことに……。実際、真空のなかに投げ出されたらああなっちゃうのかな……。

火星の氷はおそらくドライアイスであり、酸素が溶けた水は見つかっていないというのが現在の調査結果ですよね。でも当時は夢で書いていますし、火星に酸素がないと証明されたわけではありません。
正直言って序盤はかなりつまらなくて観るのがきつかったのですが、途中から徐々に面白くなり、リメイク版とどっこいの面白さでした。
そして、リメイクしたくなった監督の気持ちがまるわかりでした。ダグの家の壁のディスプレイはなかなかでしたが、ほかが全部ブラウン管モニターですからね。CGが似合う映画作品というのも珍しい気がします。出会ったのは旧作『トロン』以来ですかね。

それにしても、シュワちゃん強いなー

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